つながる悪夢
「羨ましいですね、真神さん」
絶え間なく囁く声が憎く、奥歯を食い締めるように沈黙を守ってきた。
でも、その言葉と同時に響く電子音に、俯伏せた顔をのろのろと上げた。
これ見よがしに触られていたそれは、俺の携帯で。
「お友達が多くて、本当に羨ましい」
いつもと変わらないその声に、思考力を低められた頭でも不穏なものを感じた。
「…触る、なぁっ!」
シーツを握り締め、なんとか意識を保って悲鳴を上げる。
「貴方の一番のお友達、誰でしたっけね?
…そう、白石さんに、貴方が元気だとお知らせしてあげましょうか。
きっと心配しているでしょうし」
懐かしい名前を聞いた。
別れてから多分一月も経っていない筈なのに、どうしてこんな遠い昔のように感じるんだろう。
哲平に、今を、今の俺の状況を知らせるって言うのか。
「やめ、…ろっ!」
思わず上げた制止が、聞き入れられることなどないとは分かっていた。
「分かっているんでしょう?真神さん。
私が、楽しいことが好きだって」
わかっているさ、わかっているから、また顔を伏せてシーツを握り締める。
携帯から微かに、呼び出し音が聞こえた。
頼むから、出ないでくれとそう願ったけれど。
お前が、俺の携帯からの着信に、出ないわけなどなくて。
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