励ましてくださって、ありがとうございます。
これからもがんばるです。



お礼にもならないですが、小話断片(3/6)



雨が随分激しい。
叩きつける音を聞くだけで、随分と大粒の雨なんだろうな、って思う。


そのとき、電話が鳴った。
さすがに部屋の中の音がかき消えることはないけど、何となく現実感がないなあ。



ディスプレイに浮かんだ名前を確認して、通話ボタンを押す。




「もしもし?」

『…恭ちゃんに、会いに行かな、会いに行かな思うんやけどな?」

また、唐突だなあ。
思い当たることがあって、玄関にちらりと目をやる。
ああ、やっぱり。


「傘がないんだな?」

『ま、そゆことやな。帰れへんねん。』


視界には、哲平の黒い傘。
夏も過ぎた頃から、哲平はコンビニのビニール傘を使うのをやめた。
この前来たとき、忘れていったんだよなあ。また来たときに、持たせればいいかって思って。


…近くで買えよ、というのは躊躇われる。
俺だって、進んで買おうとは思えないし。


わざわざ俺に掛けてきたってことは、近いとこにいるんだろうし。
雨の音は、水音というよりは打楽器の音みたいだし。


「わかった、行くよ。どこ?」

夕食は済んだし、今からメールチェックでもって思ってたとこだし、最近の雨は冷たいから、いくら哲平にだって濡れて帰れって言うのは心が痛む。



『スピリットやねんけど。』

「うん、濡れて帰れ。」

『…最近の雨は冷たいねんで?』

「それがどうした。」



なんて事を言いつつも、結局断る訳にもいかないかな。
押し問答を続けながら、PCの電源を落としてガスの元栓確認。

電気を消して、鍵を手に取り、哲平の傘と俺の傘を手に取る。




玄関を出る前に、戸締まり確認。

玄関の鍵もオッケーだな。




『…なあ、恭ちゃん?』

「ん?」

『なんか、後ろの雨音大きゅうなってへん?』

「なあ?」

『うん?』





「俺が潰れたら、きちんと傘2本持って帰れよ?」


『ねーさんのもやから、3本な。』




外に出ると、さすがに通話もきつくなってきて、電話を切る。








それじゃあ、冷たい雨に濡れそうになりながら、お前に会いに行ってみようか。
















哲平&恭介



これが歌ネタであることすら、分からない方もいるのでは…(遠い目)
哀しげな雨の歌、と言われて思い浮かぶのはまずコレなのですが。








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