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お礼にもならないですが、小話断片(5/6)


目覚ましが鳴る前に、珍しく目が覚める。


「…寒くなったなあ。」
ベッドから這い出すのも面倒だけど、このままだと二度寝するだろうし。

食パンをオーブンに入れて、やかんを火にかける。
ニュースでもチェックしておこうかと思って、パソコンを立ち上げた。


軽やかな音と、飛んでくるメッセージ。


”おはよう、KYO 

”あ、おはようSAKU。早いな ”

”今から寝るんだけどね ”

”…早い、って言って良いのかなあ、それは ”

”良いんじゃない?早い時間に何かすることに間違いないんだし ”



意図的に間違えているような気もするんだけど、いつものことか。
トーストが焼き上がった音がして、少しだけ笑いながらパソコンの前を離れた。

皿に載せて戻ってくると、やっぱりメッセージが返ってきてて、慌てて腰を下ろす。



”ところでさ、今日結構寒いよね。風邪とか引いてない? ”

”大丈夫。寒いけどね。あんまり風邪はひかないんだ ”

”そっか。でも、KYOが風邪ひかないって言っても、俗説にはあてはまらなそうだね。生活がきちんとしてるのかな ”

”…俗説にあてはまるって自分で言ってたら、探偵してちゃいけないよなあ。SAKUも嫌だろう? ”

”そうだね、KYOがそういう人間だったら、多分どこかで縁切れてたよ ”

”やっぱり。…しかし、生活はどうなんだろう。きちんとできるときはきちんとしてるけど ”

”三食取って、生活のリズムが崩れてなければ良いんじゃないかな ”

”…SAKU、大丈夫? ”

”それなりに生活リズムはあるよ。逆転してるけど ”

”食事は?”

”それなり。こんな時期になると、やっぱりそれらしいもの食べたくなるけどね、鍋とか ”

”鍋は、ひとりでも出来ない訳じゃないし、楽なんだけど、気分は出ないかな ”


季節の食卓とか、そういうものとは縁遠くなるよな。独り暮らしの自炊って。
手にしたトーストを見やりながら、何となくわびしくなる。
そう、それにその前に。

”野菜も高いからね、使い切れる量に切り分けられてるから、楽と言えば楽だけど。白菜とかって何となく買えない。”


別に使いにくい野菜ってわけでもないんだけど。
つい、昼とか夜とか外になることもあるから、使い切ることを考えると躊躇ったりする。


”野菜売り場に滅多に立ち寄らない人間としては、実感無いな ”



”そうなんだろうね。でも、冬だしやっぱり誰かと囲みたいかなあ ”

”食べられると思うけど ”


あっさりと返ってきた文字に首を傾げる。


”KYOの親友君、そういうの巻き込みそうだし、割と食事に誘ってもらえるんじゃなかった?”



そういえば、そんなことも話したかなあ。
ああ、まともな食事をした日とかに繋がると、話してるかもしれない。

そうだなあ、声掛けられるの、期待しても良いかな。



”もっとも、メンバー間違えたら、闇鍋になるかも知れないけど ”

”…怖いこと言わないでくれ、SAKU ”


…奈々子と哲平だったら、限りなくその方向に行くかもしれない。
食べ物を粗末にするのは嫌だから、それは断固として阻止しよう。


”そうならないよう、こっちでも祈ってるよ。それじゃあ、そろそろ寝るよ。KYO、仕事は?”

”うわ、本当だまずい。それじゃあ、また。おやすみ、SAKU ”

”うん、またね ”



すぐに、オフラインに切り替わる表示。
季節に関係ない質素な朝食をかじりながら、出る用意を調える。


ひとりで鍋っていうのもなんだし、かといって呼ばれるのを待ってるのもなんか変な気がする。
ああ、こっちから呼んでも良いんだな。
材料費とかを負担してもらっても良いんだし。



そうなったら、SAKUだって呼びたいんだけど。
さすがにそんなわけにもいかないから。


ものすごく簡単な、鍋料理のレシピでも教えようかなあ。
…作ってくれるかどうかはともかくとして。












SAKU&KYO



やっぱりこの話、冬が過ぎたら引き上げなきゃいけないかなあ。
どんどん所帯じみていく…?









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