分かってしもても。

結局何も変えたりせんけど。




温度差






恭ちゃんベッドに放り出して、かきかきと首回す。

ねーさんおったわけやないし、そんな深酒はさせてないつもりやったんやけどなあ。
結局、肩貸して歩いてるんか、抱えて引きずってるんかわからん状態で恭ちゃんちに辿り着いた。


視線下げれば、恭ちゃん、仰向けんなってほとんど寝とって。
しあわせそうやな、てちょっと笑う。

暑かったからやろな。見たら前髪、汗で額に張り付いとって。
考えも無しに、払おうかって思い立った。
身をかがめて、手を伸ばして軽く触れる。



触れた指先より、恭ちゃんの体温高うて。
いつもは、恭ちゃんのが低いから。
なんでもないことなんやけど、一瞬驚いて固まる。


その気配に気付いたんか、恭ちゃんむずがるように眉寄せて、ゆっくり目開ける。



…目が合うて。



確かに何かを押し込めて、表面繕ってる自分がおった。



「…すまん、起こしたな」
いつも通りにそう言えて、恭ちゃん、その言葉に苦笑する。
「俺、寝てた?」
連れて帰るときから、寝てた言うたら寝とったけど。
「寝てたわ」
そう言ってから、恭ちゃんのぞき込んでた身を起こす。そして、それなりに、普通に笑う。
「…そか、ごめん。…哲平、もう帰るよな」
そやな。…これは、帰らんとな。
「ん、そうさしてもらうわ」


それ聞いて恭ちゃんが、ころん、と仰向けから横向きなって、身を起こそうとする。
やっぱちょっとぐらぐらしてるみたいで、オレが手出したらそれ掴んで。
「…よし、と。やっぱ酔ってるなあ。ありがと」
手を軽く引いて、ベッドから立たせた。



掴まれた手も、やっぱオレのより熱い。



手はすぐに離れて、オレは振り向いて玄関向かって歩き出す。



顔には出てのうても、なんとなく見せたなかった。

すぐ後ろを、恭ちゃんが歩いとる気配する。
壁を手が滑る音もして、やっぱふらふらやなあって少しだけ心配になる。


玄関のドア開けて、靴はいて振り向く。

「ほな、恭ちゃん。寝るんやったらせめて着替えるんは忘れんなや?」
だいぶ、酔いも醒めてきたんかもな。
「…善処する」
いまいち自信なさげに、返された。
「そうしてくれ。…おやすみ」
そう言うて、振り向く。そのまま軽う手を挙げ、ひらひらって振った。
「おやすみ、哲平」
そんで、ドア閉まった。


妙な気疲れに、すぐに歩き出さんとぼーっと立っとった。んで、ドアの向こうで動く気配にちょっとだけ、気に掛かることに気付いてしもて。
こんこん、て肩越しに、後ろ手でノックした。

しばらくの間があって、恭ちゃん気付いてくれて。
あっちから問いかけられる。
「忘れ物?」
「ん、恭ちゃんのほうがな。…鍵閉めてないやろ」
「…あ、ごめん」
とことん、過保護な気もするけど。気付いてしもたらほっとけんし、かと言って、貰た合い鍵で勝手に閉めてくのも終わっとる感じがひしひしとして、躊躇われた。
かちゃり、という音を確認して、今度こそドアの前から離れる。

「なら、おやすみ」
「うん、ありがとう。…おやすみ」
そう、ドア越しにもう一度挨拶した。



外に出る。
夜の風は、涼しゅうて。
アパートの外壁に、背中もたせかけて一息ついた。


胸の奥で、なんかちりちりするようで。
「酔ったんかな」
誤魔化すように呟いた独り言を、全然鈍ってないオレの理性がさくっと打ち消す。
「……なわけ、ないわな」

ぼんやりと、額に触れた指先を見た。
もう熱なんて、残ってるわけないけど。




ふう、と深々と溜息ついた。
空を見上げれば、雲もなく満天の星空やった。
しみじみと、なんか健全な夜空やな、て意味不明な言葉が浮かぶ。



「酔われへん人間てのもな、辛いもんなんやで?」






そう、もう寝とるやろ誰かに呟いて、歩き出す。





うちに帰り着くまで、少しは頭も冷えるやろ。















fin.










ベタに自覚編。
普通に書いてて楽しかったです。
普通話のとこにおいてもよさそうですが、哲平さんのベクトルが違うので(笑)。

時間軸はいつでもよさげ。