物書きさんに20のお題【緑】

※ 哲平か恭介か両方を出す(笑)

縛りはこれだけです。

01.着信履歴
02.うたた寝
03.行方知れず 
04.路地裏
05.秘密
06.再提出
07.夜の街
08.カラフル
09.封筒
10.時代遅れ
11.かぐや姫
12.割れたグラス
13.泣いたり笑ったり
14.君がいれば
15.笑おう
16.ありがとう
17.子猫
18.俯く
19.飛ばない鳥
20.三つ葉のクローバー






01.着信履歴

哲平がいなくなった。


もちろん無断ってわけじゃなくて、ご隠居には断りを入れてあるらしい。
ご隠居曰く、「しばらく成美の面倒を任せきりになるが宜しく頼む」とのことだ。
もしかしたらご隠居の用かもしれないし、なんでいなくなるかは聞いてない。


俺にも一言あったから、怒るわけにもいかない気がする。

「しばらく音信不通になるけど、心配せんといてな。用が済んだら帰ってくるし」

随分とふざけた言葉だと思うけど、気を付けていってこいよと返した。
ここが哲平の帰る場所で、だから帰ってくるなんて言われなくたって知ってる。



もう5日。
相変わらず成美さんは成美さんで、ご隠居はご隠居で。
事務所は所長が帰ってきても、世の中平和なのかとても暇だ。

携帯を開いて、履歴からその名前を選んで発信する。
耳許に当てても、聞こえるのは呼び出し音だけ。
数回聴いたあと、また携帯を閉じた。


電源が届いてるなら、俺が電話したことに気付いてないわけないし。
今気付かなくても、俺の名前が表示されてることには必ずいつか気付くだろう。




毎日積もっていく履歴の隙間から、俺が言いたいことを汲み取って気付け。




「心配するなと言われてそうできるほど、俺は器用じゃないんだよ」








02.うたた寝

未着手


03.行方知れず

あの男はあの海の藻屑と消えて、もう浮かび上がってくることはないはずだ。
二度と会うことはないと、心の底から安堵してもいいはずなんだ。

それでもまだ、夜道に、木陰に気を張り詰めてしまうのか、哲平が軽く背を叩いてくる。
「心配すんな、恭ちゃん。もう大丈夫や」って。
「ああ、わかってるよ」と俺は笑顔を作って返すけれど。


自惚れじゃなく、俺はきっとあの男の期待に応えた。望むように謎を解いてみせて、きっと望んだ以上に夢見がちな理想主義者のヒーローだったに違いない。
きっと、あいつは悪役をこれ以上なく楽しんだことだろう。
だから、満足したんだろうか。

あの男が弄んで消した命に、悔いて心痛めることなんてありえないと知っている。
懺悔を求めて、暗がりから響く声を待っているつもりはない。


でも、心から信じ切れていない自分がいるのも確かだ。
もしも生きていたなら、俺はまずどんな言葉を言うのだろう。



そんな誰も望まない未来を仮定してしまうのは、どうしてか。





04.路地裏

変な癖が付いた。

暗くて細い路地を見ると、哲平がいるような気がして、つい目をやってしまう。

壁にもたれて煙草を吸っていたりしそうで。
手を上げて、笑って挨拶してきそうで。

いるはずのない時間と場所であっても、隣にいないときは、つい。






05.秘密

未着手


06.再提出

未着手


07.夜の街

未着手


08.カラフル (6/7)

「…奈々ちゃん、あんな?」
「ん、なに?食べていいんだよ。綺麗でしょー」
「いや綺麗とかそういう問題と違てな、料理には料理に似つかわしい色ってもんがあると思うで」
「えー、でも、私味見したけどおいしかったよ?」
「材料単品で、やろ…」
「うん」

なら頼むわ、単品で美味いまんま食わせてくれんもんか。
食欲を逆噴射の奇跡でなくしてく、甘い湯気をたてる食い物を前にため息吐いた。

恭ちゃんおるかな、て覗いたんが運の尽きやった。
今日は奈々ちゃん通常シフトやなかったはずやと思ったんが甘かった。

「今日ねえ、いつものバイトの子がお腹壊しちゃって、代わりに入ることになったんだよ!」
珍しく機嫌が悪いんか、ぷっとふくれながら水と…注文してへんもんが置かれる。

ああ、その子に罪はないけど、おかげさんで腹壊すんもうひとり追加な?

そんでも、なんとかどちらかというと飯っぽいそれに抵抗はしてみたけども。
「なあ、今飯時ちゃうよな?」
「ランチの材料余っちゃって、果物仕入れ過ぎちゃったから試しに作ってみたんだけど、どう?」
いや、どう、て言われてもな。
フルーツ茶漬けは誰に聞いても正直ムリや言うで。
言っても聞いとらんし、諦めて手元に小さい女の子が夢に見る、一見キレイなそれを引き寄せた。

箸を割ったのを見てか、奈々ちゃん口開く。
「見習い、感想言ってくれなかったんだよねー」

…待て。

「恭ちゃんにコレ食わせたんかい!」
「なんか、初め遠慮してたんだけど」
いや、それ日本語おかしい。それ遠慮違う、絶対違うわ。
「私、誕生日なのにがんばって働いて作ったんだって言ったら、『仕方ないな』、って」


結局、いつも通り押し負けたんやろうけども。
なんかその経過があんまりにもお人好しで。

「恭ちゃん、ええ子やな…」

誰に見せるわけやないけど、目頭押さえるポーズ取ったら、奈々ちゃん不思議そうにのぞき込んでくる。

「哲平ちゃん、冷めちゃうよー?」
ちょいちょいと肩をつついて、オレをヤバめの現実に引き戻す。
「………冷めとっても熱うても、破壊力は変わらんよな気もするけど」
「なんのこと?」

しゃあない、親友のオレが、恭ちゃんの犠牲を後目に逃げるわけにもいかんやんか。


「頂くわ、あと、奈々ちゃん誕生日おめでとさん」
箸を持ちながら、顔見てそう言うた。
「うん、哲平ちゃんありがと!」
料理は地獄の腕前やけど、こうやって笑う顔見たら、ランチタイムがサービスが無くならんで、ずっと奈々ちゃんが働いてる理由が分かるような気がすんねん。

そんな甘い考え、光の速さで吹っ飛ばすような衝撃的な味やったけど。

「…奈々ちゃん、なんで辛いんや」
「お茶漬けってワサビ乗ってるから」
「そんなとこばっかり基本に忠実ならんといてくれ」
こういうものは、逆流するより強く流し込むんが鉄則と、この一年で学んだ。
それ以上無駄口叩く余裕も無うなって、限界迎えるより早く流し込んで、勘定済ませて逃げ出した。


「また来てねー」
楽しそな声に軽く手を上げ、手早く勘定済ませて店を逃げ出す。
ドア横の壁に、縋るように手を付いてなんとか立っとると、知った気配がして。

「哲平、お前もか」
心なしか青い顔で、恭ちゃんがそこにおった。

「おう、まだ天才料理人はお仕事中やで」
一応伝えても、少し怯んだ様子見せただけ。
「わかってる。でも、奈々子に用があるんだよ」

苦笑して、ひょいと掲げて見せてきたんは、ケーキ屋の箱。

「ああ、誕生祝い?」
「ん、事務所戻って京香さんに言ったらさ、一緒にお祝いしたいって。バイト終わったら来いって言いにきた」
京香ねーさん奈々ちゃん好きやし、大将もおもろがってんもんな。

それはええとしても、気になるんは。

「恭ちゃん、ショートケーキでも、今イチゴ見るんは辛うないか」
オレは、果物と言われるもんはしばらく見とうない。
すると、恭ちゃんなんか力無く笑って。
「あいにく、中身はフルーツタルトなんだ…」
……また、そいつは随分と。
「自爆?」
「自分への荒療治と、ブルーベリーとかの正しい食べ方を学べって言うかさ…」
「どまんなか直球ストライクでも、完璧に見逃し三振してくれる子に、そんな変化球投げんでも」
そう言ってみると、ちょっとだけ肩落とした。
「ん、まあ、本当言うと、京香さんがフルーツタルト食べたがったんだ、俺の話聞いて。で、所長が面白がって…」

…不憫な。

「生きて、明日会おうな」
「俺が果物恐怖症になっても、大目に見てくれよ」
「おう、同じ痛みを知るオレが、冷たい目でなんて見るわけないやん」

「そうだな、じゃあもうちょっとがんばってみるよ。どうあれ、誕生日を祝ってやれる相手がいるのもいいもんだし」


顔色悪いながらも、少しだけ微笑んで恭ちゃんは躊躇い無くサイバリアのドアを開いた。


まあ、祝ってやれる相手がいるってのも確かにええもんではあるよな。




明日会う約束が、1日くらい早よなっても文句はないやろ。
急ぐ用事もないことやし。





当分見たないって思た、色鮮やかな自然の恵みも、似つかわしい場所に使われてたら耐えられるかもしれん。
それに、ひとり増えたらタルトひとりぶんの割り当ても減らしてやれるやろうしな。


ドアの脇、壁にもたれて美味くもない空気吸って、ドアが開くのを待つ。





「よう、恭ちゃん奇遇やな。そういやオレもヒマやったわ。一口乗らせてくれるか?」








09.封筒

未着手


10.時代遅れ

未着手


11.かぐや姫

未着手


12.割れたグラス

「痛っ…」

「大丈夫ですか、白石くん。残りは私がやりますから、もう帰っていただいても…」

マスターの声に、気にせんでええと手を振った。
見渡したら、足の踏み場もないよな惨状も少しは良うなってて。

一息ついて適当に腰掛けた。


オレの手傷つけたんは、薄手のグラスの成れの果て。
本来、こうやって投げられたりするはずのないもんやろうになあ、とつくづく思う。
ハードラックで使われてるもんはもうちょい無骨や。

いったい、こうやって無残に叩き壊されてったんはいくらくらいになるんやろうな。


いつの間にか奥にひっこんだマスターが救急箱もって出てきた。
すぐに消毒薬浸した綿くれる。
「いやいや、いつもの埋め合わせや思て、使うたってください」
「もう、あとはひとりでできますから大丈夫ですよ」


確かに、お客さん逃げてくときに倒れた椅子やらは戻したし、ほうき掛けたりはオレの苦手分野やしな。
絵を掛け直そうとしても、手が滑って落としかねん。
納得して怪我の手当てに専念する。
マスターは、ほうき取り出してカウンターの外に出てった。ちなみに潰れてもうたねーさんはフロアの隅で休ませてる。下手に揺らしたら余計大事になりそうやった。仕事増やすよりは、休ませとこって意見が一致した。

まずは絵を掛けなおしてるマスター見ながら、消毒済ませて救急箱から絆創膏勝手に貰う。

そういや、この程度のケガで手当てなんぞすることなかったし、そもそもケガの原因かて…

「まさかこのオレが、誰かの後始末でケガするようになるなんてなあ」
「ははは、それは、後始末をさせるほうだったんでしょうか」

後始末なんて考えもせんかったなあ。
とりあえず、伸したヤツ残して店出てくだけで、あとの惨状なんてオレの知ったことやなかった。
その次に店行っても、普通どおりに営業しとったし、ケンカ売ってきたやつは二度と姿を見せんかったし。似たようなん数だけ集めてきたんもおったっけな。でも、結局は姿見せんようなってた。
その店の店員とかも、俺が来るとあからさまに嫌そうな顔一瞬して、それからオレ怒らせんように媚びるか事務的に接するかのどっちかやったな。

「あと、下心なしに女送ることもなかったし、潰れた男送ってくなんて天地ひっくり返ってもありえんかった…はずなんやけどなあ」
亮太やらが潰れててもそんなん捨ててくのが当然やった。そんな生活から抜けた今でも、恭ちゃん運んだりしてるとき、笑えて仕方ないときがある。



「じゃあ、今こうやって面倒見たり、後始末してるのが嫌ですか?」


その質問には、口が勝手に答えてた。

「や、楽しいな」
ねーさんしゃあないな、いつも、とか恭ちゃんこんなんで生きてけるんか、とか。
そんなこと考えながらタクシー呼んだり片付けしたり結構喜んでやってる。
「私も、そうですよ」
相槌に、マスターを見た。箒掛けんのに俯いてたけど、口元は笑うてた。


ほんま、オレら立ち入り禁止なってもおかしないんやけど、いつでも好意的に受け入れてもろてる。ご隠居から頼まれてるってのもあるやろうけど、そやなくても、このマスターなら追い出したりせんのやないか。







「まあ、後片付けするようなこと、一回でも減ってくれたほうがええんは違いないんやけどな」
「…私も、心から願っているんですけどね」



でも、最近ねーさん荒れんようなってきたし、恭ちゃんも巻き込まれて潰されること減ってきたし。




マスターの心労も減るんやないか、なんて心配するのも、やっぱりガラやない。






13.泣いたり笑ったり

未着手


14.君がいれば

それを持つ手が、震えた。
それを当然だと、哲平は言った。


もしも、が意味のない現実だから、誰もが起きてしまった出来事を受け止めて生きていくんだけど。

もしも、あのとき俺が引き金を引けていたなら。
あいつが、それを甘んじて受けたとしたら、どうだっただろう。


哲平はそれでも、それを当然だと言うような気がする。
あいつのことをお前なりに悼んだ上で、それでも俺が生きていて良かったと言ったんじゃないか。

お前が結局行かなかったその先に、俺が踏み込んでしまったと知っても、「オレが代わりにやってやれたらよかったんにな」とかなんとか冗談にもならないことさえ言いそうで。


かつて越えなかった、危うい線を許容するような言動を、お前にさせたくはないんだ。




この先待っている真実に、何を突きつけられても。
この先で嗤う奴に、どれほど憎しみを募らせても。

「俺は、大丈夫だよな?」
その場に向かう道すがら、自分への問いははっきり聞こえた。


信じたことが歪にひび割れ、それに魔が通るかもしれないけど。
引き金を引かなかったことが当然なんだと、お前に言わせ続けてみせる。




この先で何を俺がしても、当然だとお前は言うから。






15.笑おう

未着手


16.ありがとう

未着手


17.子猫

「ヘル、この仔知らないか?」
セクンドゥムで、いつものように餌をやりながら、気まぐれに尋ねてみた。

俺の手の中にあるのは、まだまだ幼い仔猫の写真。例によって、俺のメインの仕事の迷い猫探しだ。但し、無償の。



その仔は正規に依頼されたわけではない。とおば東通りの店に、迷い猫のポスターを貼ってくれるよう頼んでいた女の子がいた。
一緒に歩いていた京香さんが、健気にがんばっている姿に甚く心を打たれたらしく。
…結局。
「あなたのおうちに来たばっかり仔なのね…でも大丈夫、必ず、またその仔を連れて帰ってあげるから」

隣の俺は、ある予感をひしひしと感じながらも口を挟む隙も無いままに。


「この、真神くんが!」


予想通りのお決まりの台詞を、従容として受け入れるしかなかった。その言葉に、涙に濡れた顔をぱぁっと輝かせたその女の子を、悲しませるようなことも言えないし。
ちなみに所長にも伺いを立ててみたんだけど、面白そうに口の端をくい、と上げて。
「同じような依頼抱えてるんだから良いんじゃないか?」
確かに、猫探しの依頼がまだあったりするけどさ。この方面で売れっ子っていうのもなにか物悲しい気がする…探偵として。
所長は、ただ京香さんに甘いだけな気がするけれど、仔猫が迷っていて女の子が泣いているというのは気分の良いものじゃない。
それに、他にも同じ仕事を抱えているのは事実だし、探す手間は変わらない。なんだかんだ言いつつも、熱心に探してる自分がいた。


でも、やっぱり人間よりも手がかりが少ないのも事実だ。成猫ならもうちょっと探しやすいんだけど。餌をとるにも不自由しそうなこんな小さな仔だと、手がかりも少なくて。
文字通り、猫の手も借りたい気になってしまって。



「お前、ここらへんに顔利くだろ?……って何やってるんだよ、俺」
いくらヘルが賢くても、さすがにこれは無いよな。
「いや、悪かった。気にしなくていいよ」
と、つい謝ってから首をかしげる。どうして俺は、こうもヘル相手に腰が低いのか。

どうにも締まらない俺の様子を横目でちらりと見ながら、悠々と餌を食べて、そしてふらりと外に出て行った。
なんだか、鼻で笑われたような気がした。
とりあえず水を換え、セクンドゥムを出る。ちなみに、成美さんには挨拶したんだけど、まだベッドの中のようだった。


その日は、足を棒にして歩き回ったけれどさしたる収穫は無かった。成果無しでも報告はしなきゃいけない。良くない知らせが無かったのは何よりにしろ、重い足取りで事務所のドアを開ける。
「ただいま戻りま…」
「真神くん、仔猫見つかったんですって!」
思いがけない出迎えに、目を見開く。
一瞬、足の疲れも吹っ飛んだ。
「どこにいたんですか?」
「家の前で鳴いていたんですって、やっぱり産まれてしばらくの仔でも覚えてるのね」
それはどうだろう。
あんな小さな仔、自力で戻ってこられるんだろうか。
あのポスターを見て気付いた誰かが、そっと連れてきたか、あるいは…

いやいやそれはないだろうと、脳裏を過ぎった考えを打ち消す。真相はどうあれ、解決したのはいいことだ。事務所を訪れたときと打って変わって軽い足取りで家に帰った。



翌日。
哲平がご隠居のお供で、成美さんが寝ているため、またヘルの餌を用意しにきた。
「なあヘル、お前が見つけてくれたのか?」
たずねては見ても、にゃあとも答えてくれない。
少しだけ、なにかを期待した俺に自分で苦笑いする。つい、ヘルが言葉を理解してるような気になってるなあ。
答えが無いのと、人目が無いのをいいことに、なんとなく餌を食べる様子を見ながら話し掛けていた。
「やっぱり、お前いいやつ…」
…なんだなーと冗談めかして続けようとしたとき。
「フー――――――――ッッ!!」
思いっきり威嚇された。そしてそのまま、気分を害したとでも言いたげに出て行ってしまった。


いくらなんでも、間が良過ぎだ。


なあ、お前、俺の話してること分かってるんだろ。
で、見つけて連れて行ったのやっぱりお前だろ。


ついでに、今威嚇したのは、照れ隠しだな?


答えないんだから、そういうことにするぞ、おい。





18.俯く

未着手


19.飛ばない鳥

未着手


20.三つ葉のクローバー

未着手